借用書とは、金銭の貸付を受けるときに債権者と債務者が取り交わす書面の一種です。
友人や知人間でのお金の貸し借りに、借用書といった仰々しい書類を用意するのは抵抗があると感じる方も多いかもしれません。
しかし、逆に友人知人であるからこそ、金銭トラブルによる関係性の悪化を防ぎたいところです。
借用書の取り交わしを済ませていると、後にトラブルが起こった際に権利関係を明確にできる可能性があります。
今回は、借用書の書き方などについての紹介をします。
借用書として意味を持つ書面を作るのが最低条件ですので、最低限押さえておくべきポイントをこの記事でぜひ理解してください。
この記事でわかること
- 借用書としての意味を持たせる最低限の内容を盛り込む
- 借用書としての効果をより高めるポイントがある
- 公正証書にするなどより効果を高める方法もある
- 借用書には将来的な金銭トラブルを回避できるなどの効果がある
借用書の書き方や要点をしっかりと理解して、友人知人と安心してお金の貸し借りを行う際の参考にしてみてください。
借用書の意味合いを持たせるため最低限の書き方を押さえよう
借用書は、単にお金を貸し借りする両者で取り交わすだけで良いというわけではありません。
借用書としての意味合いを持たせるためには、最低限盛り込むべき事項を満たすなど、書き方に注意する必要があります。
借用書としての意味合いや役割を持たせるために含めるべき内容や書き方について、以下に3項目紹介します。
- 冒頭には借用書と明記する
- 借用書として成立させる最低限の項目を含める
- 金額を記入する際は大文字の漢数字にする
友人知人と金銭の貸し借りをする際に役立つ借用書について、ぜひ理解を深めてみてください。
冒頭には借用書と明記する
まず、書面の冒頭に必ず「借用書」という言葉を記載しましょう。
タイトルを借用書としておかないと、異なる書面と捉えられる根拠となってしまう恐れがあります。
例えば、領収書として判断されると、借用書とは反対の意味の書類となってしまうでしょう。
本来、お金の貸与を意味する書類である借用書が、逆にお金を返してもらった証明となってしまう場合があります。
借用書というタイトルを入れておかないと、法的な効力が損なわれてしまう場合があります。
まずは、借用書という文言を冒頭に明記しましょう。
借用書として成立させる最低限の項目を含める
取り交わした書類が借用書として成立するためには、最低限必要な項目を含める必要があります。
先ほど紹介した、「借用書」というタイトルの記載もその1つです。
これ以外で最低限含めるべき項目といえば、以下のようなものが挙げられます。
- 作成日
- 元金の金額
- 貸主の氏名
- 借主の情報(氏名、住所、捺印)
- 返済期日
- 返済方法
- 利息の有無及び利率
以上の項目が盛り込まれていると、十分に借用書としての効果を発揮するでしょう。
これに加えて、可能であれば連帯保証人についての記載を含めると、さらに確実に返済が受けられると考えられます。
金額を記入する際は大文字の漢数字にする
借用書に金額を記入する際には、漢数字を用いると良いでしょう。
また、大文字で記載するのもおすすめです。
大字とは、1=壱、2=弐などのように、難しい漢字で数字を表す文字です。
普段使用しない大字の漢数字は記載が難く感じるため、普段使用している算用数字で、金額を記載したいと感じる人も多いでしょう。
算用数字で記載してはいけないわけではなく、算用数字を用いて金額を記載しても、借用書としての効力は持たせられます。
しかし、借用書のような重要書類には、大字の漢数字が利用される場合が多いです。
借用書において、貸付金額は非常に重要な要素であるのは間違いありません。
算用数字では、比較的簡単に改ざんができてしまうのが問題です。
算用数字は、簡単に修正および加筆ができてしまいます。
大字の漢数字を記載するのは難しいのですが、借用書には算用数字よりも大字の漢数字の方が一般的に利用されています。
借用書の効力を高めるためのポイントについても理解しよう
借用書としての効果を持たせるために最低限のポイントを押さえた後は、より効力を高めるための手法についても理解をしましょう。
借用書作成において最も注意しないといけないのが、改ざんや不正利用です。
借用書をより信頼感のあるものにするため、以下のポイントについても理解しておくのが良いでしょう。
- ボールペンで記載する
- 署名の箇所は必ず自筆にする
- 同じ借用書を2通用意する
- 反社会的な内容は厳禁
- 連帯保証人をつけてもらった方が確実
- 金額によって印紙税が必要
- 借主に意思能力があるか確認する
お金の貸し借りや借用書の作成を行う前に、ぜひ理解を深めておいてください。
ボールペンで記載する
借用書は、ボールペンや万年筆など、改ざんが難しい道具で書くのが一般的です。
鉛筆で借用書を書いてはいけないというルールはありませんので、鉛筆での記載も可能ではあります。
しかし、簡単に修正や改ざんができてしまう鉛筆は、重要な書類である借用書には向かないでしょう。
なお、パソコンのWordなどの文章作成ソフトで借用書を作るのも問題はありません。
しかし、数字や金額の部分まで印字していると、偽造されたものと思われる可能性があります。
パソコンソフトを使って印字する際には、金額の欄だけは手書きにするなど、書類としての信ぴょう性をより高めるための対応をするのが良いでしょう。
署名の箇所は必ず自筆にする
借用書の署名の箇所は、必ず自筆にしましょう。
借用書には、必ず借主の署名が必要です。
仮にパソコンの文章作成ソフトで書面を作る場合でも、署名の箇所は手書きを取り入れるのが原則です。
もちろん、自筆をする際には鉛筆やシャープペンシルではなくボールペンや万年筆を用いましょう。
自筆で署名をした脇に、捺印をする場合もよく見られます。
すべてパソコンソフトで印字をしていては、書類の信ぴょう性が確保できない可能性があります。
前述の、金額欄の手書き対応と同様、署名の箇所も必ず自筆で対応しましょう。
同じ借用書を2通用意する
借用書を作成する際には、同じ内容の書面を2通用意するのがおすすめです。
もちろん、1通だけでも借用書としての効力は変わりませんが、2通同じものを作成し、貸主と借主それぞれ1通ずつ持つのが一般的です。
仮に借主が借用書を自身に有利になるように改ざんをしたとしても、貸主が持つ借用書があるために改ざんの内容が判明します。
借用書を2通作成した場合には、2通作成した旨及び借主と貸主で1通ずつ持っている旨を文章に盛り込んでおくとなお良いでしょう。
反社会的な内容は厳禁
借用書に、反社会的な内容を盛り込むのは厳禁です。
反社会的な内容が含まれていると判断された場合は、借用書自体が無効になり、返済を受ける根拠を失ってしまう可能性があります。
反社会的な内容とは、社会の習慣や常識に反し、道徳や秩序からかけ離れているものを指します。
暴力団や総会屋などを連想する人が多いかもしれませんが、博打なども反社会的な内容に含まれます。
「博打で負けてお金が返せなくなったので、貴殿から借金をしました」といった内容も反社会的な内容になってしまいます。
借用書を作成する際には、文章すべてを見返して、反社会的な内容あるいはそれを連想させるような言い回しがないか確認しましょう。
連帯保証人をつけてもらった方が確実
借主の連帯保証人を付けてもらった方が、返済を受けられる可能性が高くなるでしょう。
連帯保証人になれる条件としては、借金返済できる十分な資産の所有者である点が挙げられます。
これ以外に、以下に当てはまる人は連帯保証人にはなれません。
- 未成年者
- 成年被後見人
- 被保佐人
- 被補助人
もし借主から貸付金の返済を受けられなくなった場合でも、連帯保証人に対して返済を求められます。
金額によって印紙税が必要
借用書には、貸付金額に応じた印紙税が必要です。
印紙税は、郵便局などで販売されている印紙を書面に貼り付ける形により、納税をしたことになります。
印紙税は、貸付金額によって以下のように変動します。
借入金額 | 印紙税 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 |
1千万円超5千万円以下 | 2万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
印紙税を払わなくても借用書の効力自体は変わりませんが、印紙の貼付けがないと発覚すると、通常の3倍の金額の印紙税を支払わないといけません。
借用書を2通用意した場合には、その両方に適切な金額の印紙を貼り付けましょう。
借主に意思能力があるか確認する
借主に意思能力があるか、借用書を作成する前に確認しておきましょう。
意思能力とは、借用書を作る意味や内容を理解できるといった、精神的な能力を意味します。
例えば、借主が高齢者で認知症を患っている場合には、意思能力が欠如しているとみなされる可能性が高いです。
高齢者に限らず若い人でも、精神性の疾患によって、意思能力の欠如が見られる可能性があります。
借主に意思能力がないと判断された場合、借用書の契約が無効となってしまう恐れがあるため、借用書作成前に相手の状況をしっかりと確認しましょう。
より確実に返済を受けるためには金銭消費貸借契約書の方が良い
ここまで、借用書についての説明をしてきましたが、より確実に返済を受けたい場合には金銭消費貸借契約書の利用も検討してみましょう。
借用書も金銭消費貸借契約書も、共に法的効力がある点は違いがありません。
両者の違いは、借用書が基本的には借主が作成して貸主に差し入れるものであるのに対し、金銭消費貸借契約書は借主と貸主双方で内容を確認し合い締結するものである点です。
金銭消費貸借契約書を作成する際のポイントについて、以下に3項目紹介します。
- 必ず2通用意して割り印をする
- 署名欄は必ず自筆する
- 公正証書にすることでさらに証明力を高められる
より確実な返済を確保したい場合は、金銭消費貸借契約書の作成を検討しましょう。
必ず2通用意して割り印をする
金銭消費貸借契約書は、必ず同じものを2通作成して、対である証明のために割り印をします。
割り印とは、2通の契約書を少しずらしておき、両方の書面上にまたがって捺印する方法です。
割り印により、一方の契約書の偽造を防止できます。
借用書でも2通作成するのは、改ざん防止に有効な手段ですが、金銭消費貸借契約書の場合は2通作るのが必須となります。
署名欄は必ず自筆する
金銭消費貸借契約書の署名欄は、必ず自筆しましょう。
契約書であるため、借主だけでなく貸主側も署名をする必要があります。
自筆により、筆跡鑑定などで本人確認が取れるため、後々のトラブル回避につなげられます。
公正証書にすることでさらに証明力を高められる
金銭消費貸借契約書は公正証書にすると、さらに証明力を高められます。
公正証書とは、公務員である公証人が、個人などから委託されて作成する公文書です。
個人同士で作成した契約書はあくまで私的な文章ですが、公正証書にすると公的な証明を得られるため、証明書としての効果がより高くなります。
公正証書の形式をとる契約書によって、もし借主との間で返済に関するトラブルが起こったとしても、裁判なしで財産差し押さえの権利を得られるなどのメリットがあります。
貸し付ける相手に不安を感じる場合など、より確実な返済を確保したい場合に、公正証書を活用すると良いでしょう。
公正証書にするためには公証役場で手続きが必要
契約書を公正証書にするためには、公証役場で手続きをする必要があります。
公正証書の手続きには、該当の契約書に加え、以下の書類が必要です。
- 本人確認用の証明書類:運転免許証や印鑑(登録)証明書など
- 合意内容を記載した書面
合意内容を記載した書面には、以下の内容を盛り込む必要があります。
- 債権者の氏名
- 債務者の氏名
- 連帯保証人の氏名
- 貸し借りの発生日
- 元金の金額
- 返済方法
- 利息の約束の有無と利息支払いの方法
- 遅延損害金
- 支払いができなかったときの取り決め
また、公正証書の手続きには、以下のような費用がかかります。
- 公正証書作成手数料:貸借金額によって変動する
- 公正証書正本料:1通につき4,000円程度
- 公正証書謄本料:1通につき4,000円程度
- 特別送達費用:2,500円程度
以上のように、公正証書の手続きには費用が発生するため、本当に手続きが必要であるかしっかりと考えてから実行しましょう。
借用書を何のために作るのかを理解しておこう
そもそも借用書を何のために作成するのか、理解していない人も多いかもしれません。
たとえ友人知人同士であったとしても、金銭の貸し借りにおいては借用書を用意しておくと良いでしょう。
借用書を作成する一般的な目的について、以下に3項目紹介します。
- 金銭トラブルの回避
- 裁判になった時の有力な証拠
- 安易な借金を回避できる
友人知人間で金銭の貸し借りをする前に、借用書の意義についてよく理解しておきましょう。
金銭トラブルの回避
借用書は、金銭トラブルを回避するための役割を持ちます。
借用書には、一般的に以下の4つの効力を発揮します。
- 借主は「借りていない」という言い逃れができなくなる
- 借主が返済を引き延ばしにくくなる
- 借主が借金を忘れないようにできる
- 借金に関する重要な事柄についての誤解を防げる
金銭の貸し借りの事実が書面として残されていると、借主は言い逃れはできなくなるでしょう。
また、借用書には返済期限が明記されているため、期限までに返済しないといけないという思いを借主に持たせられます。
借主による、借金の事実の忘失にも対応できます。
さらに、借入金額や利息などの取り決めも書面として控えていると、後で誤解が生じてトラブルになる恐れも防げるでしょう。
裁判になった時の有力な証拠
借用書は、裁判になった時の有力な証拠として活用できます。
借主に返済を求めても、どうしても返してもらえない場合には、裁判により法的に返済を強制する必要があります。
裁判に発展するとわかった時、借主はあきらめて返済をしてくる場合もあるでしょう。
しかし、裁判においても借りた経歴は無いとしらを切りとおす人もいるかもしれません。
裁判官が議題の判断をする際に重視するのが、形のある証拠です。
この点で考えると、借用書は証拠として非常に有効です。
借用書の存在が確認できた場合は、裁判において強力な武器となります。
実際に、借用書が確認できたことで裁判による判決を勝ち取った事例が過去にはあるため、有効性は証明されています。
安易な借金を回避できる
安易な借金を借主に回避させられるのも、借用書のメリットの1つと考えられます。
軽い気持ちで身近な知り合いにお金を借りようと思って相談したところ、借用書に署名と捺印を求められた場合は、多くの人は戸惑ってしまうでしょう。
借用書のような物々しい書類を出されると、借金を思いとどまる人も多いかもしれません。
一旦家計を見直して、借金せずに資金を工面しようと努力する人も出てくるでしょう。
貸す側にとっても、余計なリスクを負わずに済むだけでなく、返済を受けられなかった場合の交渉や裁判をする必要もなくなります。
不要で安易な借金を回避するのは、借主にとっても貸主にとってもメリットがあるといえるでしょう。
借用書の書き方がわからないならテンプレートや市販フォームを使う
借用書の書き方や盛り込む内容については前述で紹介した通りですが、経験のない人がいきなり借用書を作るとなると、敷居が高いと感じてしまうかもしれません。
借用書の書き方がわからない人や不安を感じる人は、テンプレートや市販のフォームを使うと良いでしょう。
また、自分で借用書を作ること自体難しいと感じる人は、専門家に相談して代行してもらう方法もあります。
ぜひ、自分に合った借用書の作成方法を採用して、安心してお金の貸し借りを行ないましょう。
インターネットで無料ダウンロードができる
借用書のフォームは、インターネットから無料でダウンロードが可能です。
無料のフォームとはいえ、借用書として効力を持つ内容が盛り込まれているものがほとんどであるため、十分に活用できるでしょう。
インターネットを使って無料のフォームをダウンロードする際には、自分で内容の有効性を確認しましょう。
中には、借用書としての要件を満たしていないフォームが公開されているかもしれません。
特に、出所がわからないようなフォームについては、内容に不備があったとしても文句をいうわけにもいきません。
弁護士事務所など、出所が明確で信頼できる内容のものを選択するのが良いでしょう。
インターネットからの無料フォームの利用は便利でお得ですが、内容については自己責任であると理解する必要があります。
市販のフォームを購入できる
借用書のフォームは、紙面の形式で市販されています。
文房具店や雑貨店などで取り扱いがある場合が多く、種類も豊富です。
また、通販での購入も可能であるため、店舗で見つからない場合には取り寄せるのも良いでしょう。
市販されている借用書のフォームであれば、内容の不備はほぼ無いと考えられます。
しかし、念のため借用書の要件を満たしているか確認したうえで利用しましょう。
専門家に依頼も可能
自分で借用書を作るのが不安や難しさを感じる場合には、専門家に代行の依頼をする方法もあります。
借用書作成の代行を依頼できる相手としては、以下のようなものが挙げられます。
- 行政書士
- 法律事務所
- 弁護士
- 専門の代行業者
代行には費用を要しますが、料金設定は依頼先によって様々です。
また専門家に依頼する場合は、書類作成だけではなく、公正証書の手続きも依頼できるケースが多いです。
費用とサービス内容を十分に確認し、納得したうえで依頼をしましょう。
借用書の書き方のポイントを押さえて金銭トラブルを回避しよう
お金を貸す際には、例え友人知人に貸す場合であったとしても、借用書の作成をおすすめします。
借用書作成においては、まず以下の内容を確実に取り入れましょう。
- 冒頭には借用書と明記する
- 借用書として成立させる最低限の項目を含める
- 金額を記入する際は大文字の漢数字にする
また、より効果のある借用書にするため、以下のようなポイントにも注意しましょう。
- ボールペンで記載する
- 署名の箇所は必ず自筆にする
- 同じ借用書を2通用意する
- 反社会的な内容は厳禁
- 連帯保証人をつけてもらった方が確実
- 金額によって印紙税が必要
- 借主に意思能力があるか確認する
より確実に返済を確保しておきたい場合には、借用書の代わりに金銭消費貸借契約書を用意する方法もあります。
自分で借用書を作るのが難しいと感じる人は、インターネットからフォームをダウンロードしたり、市販のフォームを購入したりして準備すると良いでしょう。
また、行政書士や法律事務所などのように借用書作成の代行サービスを行なっているところもあるため、どうしても自信がない場合には利用を検討してみましょう。
お金の貸し借りを安心して行なうため、ぜひ借用書の運用を検討してみてください。